「療育」のDXを起こし誰もが未来を選べる社会へ ── エフバイタルが取り組む発達障害児の動画解析の可能性

「療育」のDXを起こし誰もが未来を選べる社会へ ── エフバイタルが取り組む発達障害児の動画解析の可能性

成 果研究成果のサービス化
企 業エフバイタル株式会社
業 種療育

「個性の社会実装」をビジョンに掲げるエフバイタルは、動画から子どもの非接触バイタルデータを取得することで、育児や教育を効率化するサービスの開発に取り組んでいる。なかでも現在は、fukuとともに発達障害をもつ子どもへフォーカスした動画解析サービスの開発・実装が進行中だ。AIや神経科学など先端かつ専門的な知が求められる領域で、研究とビジネスはいかに結びつきうるのか。エフバイタル執行役員の西尾萌波氏とfuku代表の山田涼太が、療育事業のポテンシャルを問う。

課題のヒアリングから開発へ伴走

山田涼太(以下、山田): 現在fukuとエフバイタルは、療育事業における動画解析システムの開発に取り組んでいます。もともとエフバイタルさんは動画解析のアルゴリズム開発を進めていらっしゃったんですよね。

西尾萌波(以下、西尾): 私たちは、動画解析技術を活用して、子育てや保育、発達障害児支援のサポートに取り組んできました。お子さんは自分の状態を自分の言葉でうまく表現できないため、代わりに動画を使って客観的にお子さんの状態や特性を分析し、保護者や保育士、療法士といった子どもの身近な人々へフィードバックします。発達障害のお子さんに対しては、個々の課題に合わせた治療と教育の組み合わせである、”療育”が提供されます。今回の取り組みでは、この療育をより個々のニーズに沿ったものにするためのサービスを開発しようと考えていました。

山田さんには単なるシステム開発の発注というより、 そもそもどんなシステムをつくるべきか検討するところから、実際のプロジェクト運営やマネジメントまで含めて、包括的にサポート いただきましたね。

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山田: サービスの概要は決まっていたもののシステム開発の面から見ると要件が定まっていないことも多かったため、まずは議論から始めたことを覚えています。たとえばひとくちに動画解析といっても結果を30分以内に返さなくてはいけないのか1週間以内に返せば良いのかによって求められるシステムの要件は変わりますし、エフバイタルさんの動画解析アルゴリズムが今後どうアップデートされるかによってもシステムのつくり方は変わります。実際にお客様とのミーティングにも同席しながら要件定義を進めていくなかで、療育事業における課題も実感しました。

西尾: 療育では、子どもひとりひとりの発達課題を見極め、それに合わせて支援のためのプログラムを組み上げる必要があります。専門性が非常に高い業務なので、これまではベテランの療法士さんのノウハウに依存してしまうことが課題となっていたんですよね。ノウハウが言語化されていないと新人もスキルを身に着けづらく、人によってサービスのクオリティに差が出てしまうことも少なくありません。動画解析を行うことで、作業の効率化を行うとともに、暗黙知の言語化を行いサービスの質を向上させられると思っています。

山田: サービスの開発にあたっては、まず乳幼児の自動音声認識の調査を行いましたね。子どもの言語や認知の発達を測る上で、音声の分析は非常に重要です。今後エフバイタルさんが動画解析だけでなく音声解析にも取り組まれていくということで、現在乳幼児の音声認識が技術的にどんな状況にあるのか論文のサーベイや実際のデータの解析を通じてまとめていきました。

音声認識自体の技術はかなり精度が上がっているものの、やはり乳幼児の音声を現場で分析するとなるとノイズも多く精度が下がってしまうんですよね。乳幼児は発声器官が未発達なので発音もはっきりとしていないし、単語のチョイスや組み立ても成人とは異なるので成人向けにチューニングされた音声認識モデルだと精度が上がりづらい。しかも日本語となるとさらにその精度は落ちてしまう。そのような調査結果を踏まえて、まずは乳幼児の音声認識は非常にチャレンジングであることをお伝えし、その上でどこから取り組めば事業を効率的に進められるかの提案をしました。

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アカデミックな知をビジネスへ接続する

西尾: 弊社は研究開発のメンバーが多くを占めているので専門的な知見はあるものの、アカデミックな問いをビジネスとして成立する形で解いていくうえでは山田さんたちのアドバイスが必要不可欠でした。動画と音声を比べると音声の方が顔が映らずプライバシーの問題もハードルが下がるため、音声認識についてリサーチいただけたことで弊社としても事業の幅が広がったと感じます。

加えて、技術開発だけを見ればやるべきことはクリアになるかもしれませんが、実際に事業化するうえでは現場の方にメリットを感じていただく必要もあります。たとえばピンマイクの方がクリアな音声をとれるとしても、現場の視点から見ればピンマイクをつけるのは手間がかかるものでもある。山田さんたちからアドバイスをいただきながら、どうすれば開発プロセスにおいても現場のモチベーションを上げられるのか意識していきましたね。

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山田: 弊社としても研究とビジネスの双方を大事にしていきたいので、エフバイタルさんとの取り組みは非常に重要なものでした。とくにアカデミア発のスタートアップの場合は研究開発のメンバーが多い一方でシステム開発やビジネス実装の部分で知見が求められることも多いため、弊社が力を発揮できるプロジェクトだったと感じます。

西尾: おかげさまで、現在は自治体を主な対象としてサービスの実装が進んでいます。保育園で撮った動画を分析し、お子さんの発達を言語・運動・認知・社会性という4つの観点から評価し個別レポートを返すサービスを提供する予定です。すでに3〜4つの自治体で実証を進めており、なかには実際に導入を検討してくださっている方もいらっしゃいます。

近年発達障害と診断されるお子さんの数は非常に増えており、発達支援のための扶助費が各自治体の財政を圧迫しているとも言われます。動画を活用した簡易に発達を評価し、それに合わせた個別最適な対応策を提案する現在のスキームについて、まずはいくつかの自治体で実証モデルをつくり上げ、将来的には全国の自治体へと広げていきたいと考えています。このサービス自体は自治体に限らず展開できるものでもありますし、先程申し上げた4つの指標だけでなく、個別のニーズに合わせてカスタマイズを行うことも可能です。今後はコスト削減や作業効率化についても我々のサービスの貢献をきちんと可視化し、事業会社の方々にも使っていただけるサービスへと成長させていくつもりです。

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格差を減らすツールとしての先端技術

山田: 研究とビジネスの接続という観点では、創薬の領域だとかなり多くの取り組みが進んでいるものの、ほかの研究分野のなかには実際に社会で役立つまで時間がかかるケースも多く、研究の社会実装が進みづらいことも事実です。

西尾: 近年は日本でも大学発スタートアップへの支援が盛んに行われるようになりましたよね。ただ、 いまだに日本ではビジネスと研究の行き来が難しいとも感じます。それはすごくもったいないことだとも思うんです。

たとえば私たちのサービスが広がれば乳幼児から高校生に至るまで、かなり長い時系列の大規模なデータを集められるのですが、こうしたデータはアカデミックな研究を進めていく上でも非常に価値があります。私たちのビジネスを通じて収集したデータを研究に活かし、研究から生まれた技術をまたビジネスへ還元すればより高い価値が生まれるはずだと思っています。

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山田: 国の科研費をとるために求められる成果とビジネスに求められる成果が異なることも事実ですが、本当は両者をつなげることでお互いにメリットが生まれるはずですよね。大学発のスタートアップとVCをマッチングするイベントなども行われているものの、一回のイベントで本当に信頼しあえる人と出会えるとは限りません。fukuとしても、エフバイタルさんのような企業の方々とのコラボレーションを増やしていくことで、研究とビジネスをもっとつないでいけたらと思っています。

西尾: 個性に合わせた個別最適な支援や関わりを提供してもらうことは、本来すべての子どもたちが等しく享受すべき当たり前の権利だと私たちは考えています。しかし、現状こうした関わりを得られているのはお金や専門性といったリソースに恵まれたごく一部の子どもたちだけで、生まれた境遇によって大きな格差が生まれてしまっている。 技術を使って必要なコストを下げ、専門家の知見を広げていくことで、こうした格差を減らし、一人ひとりが環境に依存せず成長し、未来を選べるような社会をつくっていきたいと思っています。

山田: エフバイタルさんは自社で技術を開発できるので、通常の企業よりも早く研究を社会へと届けられると思っています。そのビジョンにはポテンシャルを感じますし、弊社としても引き続き最大限サポートしていけたらと思います。

西尾: 今回山田さんたちと一緒にゼロからサービスをつくってこれたことは私たちにとっても非常にいい経験になったと思いますし、今後も活動を続けることでノウハウもデータも溜まり、ほかの企業や社会に価値を還元できるはずだと思っています。今後も「発注先」ではなく「いい仲間」として、一緒に伴走していただけるとうれしいです。

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