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テクノロジーとサイエンスの可能性を切り拓くために


AIで科学研究を効率化

現在 fukuでは、ライフサイエンスの領域を中心として、LLM(大規模言語モデル)などAIを活用した研究の効率化や研究成果のサービス化を行っています。 研究にLLMを活用することでこれまでにはない知見を発見し、自動化や効率化によって実験の量を増やすことでさまざまな研究を加速させられるはずだと考えています。

私自身、大学生のころは農学部の獣医学科で食物アレルギーを始めとした免疫の研究に携わっていたのですが、日々実験に携わるなかで、ライフサイエンスの研究に構造的な課題があると思うようになったんです。研究のためには日々実験を行わなければいけませんが、人間が手作業で行える実験には限界があります。たとえば毎日8時間を実験に費やしている人間はどれだけ頑張ったとしても3倍までしか実験量を増やせません。1日は24時間ですから。加えて、実験のためにマウスのような動物の命が失われてしまうことに心苦しさも感じていました。

そこで テクノロジーを活用すれば自動化や効率化によって実験の量を100倍、1,000倍に増やせます し、最適な実験を設計することでいたずらに命が失われてしまうことを防げるのではないかと考えたわけです。2018年にfukuを創業した当初は自社サービスとして実験条件のデータベースをつくることで研究の自動化に貢献しようと試みていたのですが、大学や研究機関、民間企業の方々とやりとりするなかで、同じような課題を抱えていらっしゃることがたくさんいることがわかり、現在は 受託業務を中心としてさまざまな機関と連携しながら研究の効率化・自動化やサービス化に取り組んでいます。

ソリューションとしてはLLMを活用するケースが多いのですが、AIに限らず、さまざまなテクノロジーの活用に取り組んでいます し、一般的なシステム開発を行うケースも少なくありません。まずはリサーチをお手伝いすることで課題の発見や整理を行い、要件定義から伴走することもありますし、公的機関が公開しているオープンデータも取り入れながら個別の研究に合わせてデータベースを統合したり整理したりすることもあれば、研究成果をもとに動画解析システムの構築を進めるなど一気通貫でシステム開発を担当させていただくケースもあります。

基礎研究からサービス開発まで幅広い事業展開

これまで私たちは、大学や研究機関などアカデミアを中心にさまざまなプロジェクトに携わってきました。 たとえば京都大学とは創薬AIに注力している研究室と継続的にご一緒していて、20を超える公共データベースを整理することでAIの学習データを作成しました。さらには、生成AIを活用することで学習データの作成自体もAIエージェントに手伝ってもらう取り組みをしています。創薬では膨大な量のデータが必要となりますから、今後もAI活用のポテンシャルが大きい領域だと感じています。

あるいは、理研のみなさまとは実験動物の交尾動画の解析システムを開発するなど、より基礎研究の現場に近い領域のプロジェクトに関わることも少なくありません。近年は「ラボラトリーオートメーション」と呼ばれるような実験の自動化に関わる機会も増えています。ロボットを用いた実験自動化の現場では、ソフトウェアの専門家として自動化の加速に貢献しています。従来はロボットに実験させてもアウトプットされたデータを人間が解析する必要があったため自動化のボトルネックになってしまっていたのですが、ソフトウェアを改良することで実験全体を自動化できるようになっていくと考えています。ライフサイエンスの研究においては、自然言語処理だけでなく画像・音声・動画の解析などさまざまなテクノロジーを活用できる可能性がありますね。

現在はアカデミアの方々との取り組みが多いものの、エフバイタルさんと発達障害をもつ子どもへフォーカスした動画解析サービスの開発・実装に取り組むなど、 今後は民間企業の方々とのコラボレーションも増やしていきたいと考えています。 近年は日本でも研究室発のスタートアップやベンチャー企業が注目されているように、 研究の成果をビジネスへ実装していく動きは今後活発になっていくでしょう。 ビジネス化することで研究の価値が社会に還元されることは、もちろん大きな経済的インパクトを生み出しますし、サービスが社会に広がることで従来の研究だけでは得られなかったような量・質のデータを収集し研究へフィードバックできるようになるはずです。

私たちとしてはサイエンスとビジネスの双方を大切にしていきたいと思っているので、新しいテクノロジーの実装による研究の効率化も研究の社会実装も積極的に取り組んでいきたいと思っています。

さまざまな研究に関わらせていただいているとはいえ、サイエンス全体を考えてみれば、私たちがリーチしている領域はごくわずかだと思っています。サイエンスのDXには、まだまだ大きな可能性が眠っているはずです。

日本のサイエンスをもっと発展させるために

そもそも日本では、私たちのような企業にシステムの開発やデータベースの構築を外注すること自体があまり一般的ではなかったことも事実です。大きな研究室の場合は予算規模も大きいので外部企業に発注することもあるのですが、内製で完結している研究室が多いのかなと思います。

領域によっては学生や研究者がプログラミングの知見を有していることも珍しくないので、複雑でないシステムの開発やデータ分析であれば、自分たちで手を動かしてコーディングできるわけです。もちろんそれが悪いわけではないのですが、担当者が卒業したり転職したりしてしまうとシステムを維持できる人がいなくなってしまうんですね。これまでのシステムがブラックボックス化してしまい、状況に応じてアップデートしていくことも難しくなってしまう。

この1年でAIが目覚ましい発展を遂げたように、日々テクノロジーが変化していく状況にあっては、 サステナブルな開発環境を構築しなければ研究の効率化も進めづらい状況にあるでしょう。 とりわけAIは目的やドメインによって最適なモデルも異なりますし、まったく新しいモデルが出てくることも珍しくない。研究者のみなさまはあくまでも自身の研究にフォーカスしたいのに、最新のAI技術へキャッチアップしようとするとさまざまなコストがかかってしまうわけです。

大学ならば研究室同士で共同研究の枠組みを用いて効率化や自動化を行うケースもあるのですが、共同研究の場合は双方がきちんと実績をつくれるようなプロジェクトにしなければいけないので、実施できる領域が限られてしまう側面もあります。あるいは研究機関の場合は大手ITベンダーに発注する場合もあるのですが、必ずしもベンダーの方々がサイエンスの専門的な知識をもっているとは限りません。場合によっては前提となる知識をインプットしなければいけなかったり保守・運用の手間がかかってしまうなど、コミュニケーションコストがかさんでしまうとも言われます。

その点、 私たちはテクノロジーの知見や実装力だけではなくサイエンスについても一定の知識をもっており、さまざまな研究のニーズに応えられる体制が整っていることが強み と言えます。現在はまだ人数も少ないので一度にお引き受けできるプロジェクトの数が限られてしまうこともあるのですが、今後は組織の強化にも注力していきますし、質だけでなく量の面においてもインパクトを生み出せたらと考えています。

私たちは、サイエンスを通じて人類や社会の発展に貢献したいんです。だからこそ、これからも研究という世界を変えうる営みに携わっていきたいですし、多くの研究室や研究者のみなさまを支援していけたらと考えています。新たなテクノロジーによって研究を加速させ、研究の成果をテクノロジーによってサービス化することで社会へ価値を還元していく。 サイエンス×テクノロジーの可能性を切り開いていくことこそが、私たちのミッション だと思っていますから。


fuku株式会社 代表取締役 山田涼太のプロフィール

東京大学農学部獣医学専修入学。休学・転学部を経て工学部システム創成学科卒業。生命科学実験の効率化を起点に「科学 × AI」領域で活動。一般社団法人ラボラトリーオートメーション協会コアメンバー。

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